【書評・感想】パーパス・マネジメント

ビジネス書

「社員の幸せを大切にする経営」と言われて異議を唱える人はいないでしょう。では「社員の幸せを経営指標にする」と言われたらどうですか?すんなり賛成できるでしょうか。ちょっと違和感がありますよね。そもそも「幸せ」なんて人それぞれ定義が違うのに、どうやって測るというのでしょう。それに社員の幸せなんて曖昧なものではなく、売上や利益などの業績に直結する数値の方が大事に思えます。

 

今回ご紹介する『パーパス・マネジメント』(丹羽真理著)には、社員の幸せこそが業績アップに直結すると書かれています。本書の副題「社員の幸せを大切にする経営」からは精神論を匂わせる雰囲気があります。ところが、読み進めるうちに著者の意図するところが明らかとなり、読み終わる頃には「業績を上げたければ、まず社員の幸せ度アップに取り組むべし」と確信するにいたります。

 

経営者やマネジメントあるいはリーダーのポジションにいる人は、本書読むと読まないとでは後々の会社またはチームの業績に大きな差が出ることでしょう。

 

『パーパス・マネジメント』の書評・感想

まずは『パーパス・マネジメント』の書評です。

 

本書は、タイトルから想像していた勝手なイメージをいい意味で裏切ってくれました。「パーパス」だとか「社員の幸せ」だとか抽象的な内容に終始しているのかと思えば、実は科学的に実証されたデータにもとづいた主張が展開されていたのです。

 

本書のタイトルにある「パーパス」とは、「目的」という意味ではなく「存在意義」という意味で用いられています。これが社員の幸せ度合いを考える上で鍵になります。これまでのビジネス書は、時間の使い方や営業成績を上げるための手法、生産性を高める方法など、テクニック面に着目したものがほとんどでした。ですが本書は、働くということだけでなく、生き方そのものの本質に迫る内容になっているところがほかと一線を画しています。

 

考えてみれば、世界的企業であるグーグルが社内に社員が楽しめる大掛かりな仕掛けを作っているのも単なるお遊びではないのです。何らかの効果があると確信しているからこそ、一見仕事とはまったく関連性の見えない「遊び」に投資できるのでしょう。社員の幸せという精神状態が会社の業績を左右し、その効果が数字に現れているのなら、それを学ばない手はありません。

 

最初は半信半疑でも、騙されたと思って一読されることを強くおすすめします。

 

次に『パーパス・マネジメント』の感想です。

 

社員が幸せに働けて会社の業績もいいなんて、こんなに素晴らしいことがあるでしょうか。できることなら、誰しもが理想とする組織のあり方です。しかし現実は、そんなオメデタイことを言っていてはこの激変の時代を乗り切れないと真面目に追求したりはしません。

 

ところが、本書の著者・丹羽真理氏は「社員が幸せだと、会社の業績は間違いなく上がる」と断言します。自分が信じたいことを誰かにはっきりと賛同してもらえると安心感が広がります。それに本書には数字よる裏付けがたくさん紹介されています。もはや疑う余地もありません。

 

私たちは人間です。人間には感情があります。そして感情は時として自分でもビックリするようなパワーに変わる時があります。そうした本質を無視して社員を働かせようとしても無理があるのかもしれません。

 

『パーパス・マネジメント』の要約

パーパス・マネジメント』の内容を簡単に要約してご紹介しましょう。

 

本書の要点は、「社員がいきいきと幸せに働いている会社の業績は上がる」ということです。つまり、ポジティブな感情はパフォーマンスに影響し、結果的に会社の業績は上向くということです。幸せとビジネスにおける成功の関係性を簡単に表すと、「努力→成功→幸せ」ではなく「幸せ→努力→成功」だったのです。

 

そして社員がいきいきと働くためには、本書のタイトルにもある「Purpose」が鍵となります。これは「存在意義」と解釈する言葉で、個人のPurposeと組織のPurposeが合致した時にやりがいが生まれて社員は目覚しい成果を残す可能性が高まります。

 

そして、以上のことを前提として組織をデザインするのが「CHO=Chief Happiness Officer」です。この取り組みが組織風土改革にも通じることを考えると、CHOは経営職であることが望ましいのですが、チーム単位でも実践することは可能です。

 

社員の幸せ度合いが仕事のパフォーマンスに与える影響に関するデータや具体的な取り組み事例については、ぜひ本書をご覧ください。

 

丹羽真理氏の経歴

丹羽真理氏の経歴は下記のとおりです。

 

Ideal Leaders株式会社 共同創業者/CHO(Chief Happiness Officer)

国際基督教大学卒業、University of Sussex大学院にてMSc取得後、2007年に株式会社野村総合研究所に入社。民間企業及び公共セクター向けのコンサルタントとして活動後、エグゼクティブコーチングと戦略コンサルティングを融合した新規事業IDELEA(イデリア)に参画。2015年4月、Ideal Leaders株式会社を設立し、CHO(Chief Happiness Officer)に就任。社員のハピネス向上をミッションとするリーダー「CHO」を日本で広めることを目指している。経営者やビジネスリーダー向けのエグゼクティブコーチング、Purposeを再構築するプロジェクト等の実績多数。特定非営利活動法人ACEの理事も務める。

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