素人にも実践可能!『フェイクニュースの見分け方』の書評・感想

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情報の真偽を確かめるというのは、ちょっと面倒ですよね。その情報がウソなのかホントなのかを判断するためには、エビデンスが必要です。なぜ、そういえるのか。論拠や証拠がわからなければ、ウソかホントかを見極めることはできません。

 

ですが、新聞記者でもない一般市民のわたしたちが、情報の真偽を確かめるのはハードルが高いです。取材の方法もわかりませんし、人脈もありません。それに、いちいち確認作業をしていては生活に支障が出ます。だから「面倒くさい!」と思ってしまいます。

 

そこで、今回ご紹介する『フェイクニュースの見分け方』が役に立ちます。素人にも実践可能なウソとホントの見分け方が書いてあるだけでなく、実際の事例にもとづき、どのように確認すればいいのかが書いてあるので、とてもタメになります。ぜひ『フェイクニュースの見分け方』の書評感想を参考にして、本書を手にとってみてください。

 

ニュースのウソとホントがわかる!『フェイクニュースの見分け方』の書評・感想

では、『フェイクニュースの見分け方』の書評からですが、本書は情報の取扱いに関する指南書といえるものです。

 

著者の烏賀陽弘道氏は、朝日新聞社で新聞記者、週刊誌記者、編集者を合わせて17年間経験したベテランですので、情報の真偽の見極め方には長けています。しかも烏賀陽弘道氏は、著書『「朝日」ともあろうものが。』で朝日新聞社の記者でさえ記事をでっち上げることがあるのだと、内部の実態をウソ偽りなく書くほどの正義感の持ち主です。本書でもその厳しい目で指南してくれています。

 

フェイクニュースの見分け方』第5章から一つ面白いエピソードをご紹介しましょう。

 

福島第一原発事故の現場で、当時責任者として対策に当たった吉田昌郎所長(故人)は「偉人」なのかどうかを考えます。

 

たとえば、門田隆将著『死の淵を見た男』(PHP研究所・2012年)には、メルトダウン・放射性物質放出という原発の危機を食い止めるために吉田所長らが奮闘する物語が描かれていて、それはさながら英雄譚のようだということです。

 

しかし、烏賀陽弘道氏は朝日新聞社時代の経験から知っていました。電力会社の原子力部門の社員は、その社員人生の大半を社内の原子力部門で過ごすか関連団体・官庁へ出向することを。つまり、原子力発電所の所長は、そういう原子力部門で過ごした東電原子力部門のキャリア組社員だということなのです。

 

ここで烏賀陽弘道氏は一つの疑問をもちます。吉田所長が福島第一原発に所長として異動する前、東電本店に勤務していた時代に、原発の津波対策にかかわっていなかったのか、と。そしてその答えを、添田孝史著『原発と大津波 警告を葬った人々』(岩波新書・2014年)に見つけます。

 

そこには、2008年3月、東電の土木調査グループが津波想定を担当する吉田昌郎・原子力設備管理部長に、津波地震が福島第一原発に高さ15.7mの津波をもたらす可能性があるという予測結果を説明したという記述がありました。

 

ここで、当初の英雄譚に違和感が湧いてきますね。結局のところ、吉田所長は東電時代に津波被害を想定できたにもかかわらず、それを握りつぶし、その後自身が巨大地震と対峙することになったということなのです。

 

わたしは『フェイクニュースの見分け方』を読んでみて、まるで探偵小説のようだなという感想をもちました。ニュースの一つひとつを取り上げてウソかホントかを考えるのは、正直面倒くさいのですが、推理探偵にでもなったつもりで読めば、その思考も楽しくなります。そうして情報を読むときの意識を高くしているうちに、次第と感覚も訓練されていくように思います。

 

烏賀陽弘道氏による日本会議の安倍政権への影響分析

最後に、烏賀陽弘道氏がエビデンス不足として例示していた日本会議の安倍政権への影響分析についても触れておきます。

 

2016年に日本会議安倍政権の政策決定に重大な影響力をもつという論旨の書籍が続々と出版され、これに烏賀陽弘道氏は興味をもちます。

 

しかし、日本会議と安倍総理の政治目標が似ていたとしても、偶然の一致という可能性もありますし、議員連盟が無数にあるなか、安倍内閣の政治家が日本会議系の団体に加盟していることだけで「重大な影響力をもつ」とは断定できません。

 

そこで、日本会議関係者と安倍総理がどのくらいの頻度で接触しているかを調べたところ、過去10年間でたったの2回、時間にして合計49分だったということです。これでは十分な説得力をもっているとは言い難いですね。

 

烏賀陽弘道氏曰く、本に書くなら、最低でも「カネの流れ」と「人の動き」は調べておくべき。本に書いてあるからといって事実をいっているとは限らないのですね。

 

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