最近では、将来の年金受給額の目減りや受給年齢の引上げにより、老後資金への不安から自分でお金を運用しようと投資に手をだす人も増えているのではないでしょうか?ですが、見よう見まねでお金を注ぎ込んでも、うまく殖やすことができなかったばかりか、かえって損をしたという人も少なくないでしょう。
それでも、できるならば自分で投資運用をして着実にお金を殖やしたいという人には、今回ご紹介する『これが長期投資の王道だ』(澤上篤人著)がおすすめです。
投資の小難しい理論や数式はいっさい登場しません。初めて投資をするという人にもわかりやすく、大事なことは何度も繰り返し説明してくれていますので、安心して手にとってください。
多くの人が投資というものをいかに考え違いしているか、そして長期投資のメリットが十二分に理解できるはずです。本書の内容も簡単に紹介しますので、書評や感想とともに参考にしてください。
長期投資のメリットとは
まずはじめに、長期投資のメリットについて考えてみましょう。
『これが長期投資の王道だ』の著者・澤上篤人氏は、多くの人は投資というものを勘違いしていると強く指摘します。少しでも高く売ろうと小さな値動きにも一喜一憂し、儲けてやろうという熱気に取り込まれるのは、投資でも何でもないというのです。投資でなかったら、いったい何なのでしょうか。澤上篤人氏は、それを「銭ゲバ」投資と表現しています。
「銭ゲバ」投資だろうと何だろうと、お金が殖えないと意味がないのだから、当たり前じゃないかと思いますよね。世界の機関投資家たちは、客から預かった資金を少しでも多く殖やすからこそ、ビジネスとして成り立ちます。
ですが、機関投資家と個人投資家を比較したときに、その情報量と資金力、組織力には圧倒的な差があります。個人が同じことをやったところで勝てないのは目に見えています。そこで「長期投資」のやり方が個人投資家を救ってくれるのです。
投資というものは本来、短期的な値ザヤ稼ぎをするものではありません。少しでも高く売ってやろうとか、少しでも安く買ってやろうとか、虎視眈々とつけ狙うようなものではないのです。長期投資であっても、当然「安く買って、高く売る」のがセオリーですが、「銭ゲバ」投資と異なるのは、長ければ10年とか20年というスパンで投資する点です。
しかも、投資対象は自分自身が応援したいと思う企業です。そんな企業の株価が暴落したときに安く買わせてもらう。そして株価が高くなったときに売って利益確定し、次の投資の資金にする。これが長期投資のやり方です。安いときに買うのですから、買って損したということはありません。安い間は持っていればいいのです。高くなったときに売れば、確実に利益が出ます。これが長期投資のメリットです。
【書評】これが長期投資の王道だ
次に『これが長期投資の王道だ』の書評ですが、本書は、投資を始めるならまず最初に読むべき一冊に挙げられるでしょう。投資というものの考え方をここまで徹底的に教えてくれるものは他にないのではないかと思われるほどの丁寧さです。
市場はさまざまな要因で変動しますから、個人投資家が小手先でどうにかなるものではありません。市場がどのように動くのかを知らなければ、手が出せないでしょう。守るべき投資の鉄則もあります。これらの素人なら誰もが疑問に思うことが、事細かに解説してあるのが本書です。入門書としても実践書としても役立つ一冊です。
【要約】これが長期投資の王道だ
最後に、『これが長期投資の王道だ』の内容を簡単に要約してご紹介しましょう。
本書は3部構成になっています。第1部では、投資に関する考え違いを徹底的に正してくれます。ここを間違えたままだと、資金力も組織力もバカでかい機関投資家たちに丸腰で挑んでいくような愚を犯します。何度も読み返して、本来的な投資の考え方を学んでください。
第2部では、実践編として長期投資のイロハを教えてくれます。投資で損をしてしまう人はいったい何が悪いのか。その理由も明らかになっています。また、投資の鉄則は「安く買って、高く売る」ことだといっても、素人にはどうすればいいのかがわかりません。投資のタイミングとリズム、景気の波を勘案して、株式保有するのがよい時期、現金化するのがよい時期、債券を買うたった一つのタイミングなどが丁寧に解説してあります。
第3部では、著者・澤上篤人氏が「生活者投資家」の考え方を提唱しています。数字を追いかけるだけのマネー転がしではなく、社会全体の利益を第一に考えた投資が広がっていけば、資本主義の終焉や限界といわれる事態にとって救いの手になるだろうというのです。資本主義の未来、そして私たちの社会の在り方をも考えさせられる内容です。
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