アクセンチュア流 生産性を高める「働き方改革」の書評と感想【江川昌史:著】

ビジネス書

昨今、一億総活躍社会実現の一環として、「働き方改革」の必要性が声高に叫ばれています。実際に働き方改革を実行した企業もあると思いますが、改革がうまく進んだ企業はいったいどれくらいあるでしょうか。

 

アクセンチュアの江川昌史社長によって記されたアクセンチュア流 生産性を高める「働き方改革」を読めば、働き方改革の重要ポイントや手順、進め方がわかります。また、アクセンチュアが実際に作成して使用した資料の一部が公開されていますので、とても参考になります。

 

働き方改革に失敗してしまった企業や、これから働き方改革を実行したいけど、どうしたらいいかわからない企業の人事担当者や経営者は必見です。

 

以下、書評と感想をご覧ください。
スポンサーリンク



アクセンチュア流 生産性を高める「働き方改革」の書評/感想

働き方改革は、組織改革です。つまり、組織風土やカルチャーという言葉で表される目に見えないものを変えていく作業なのです。チャレンジした人にはわかると思いますが、一筋縄では行かない本当に大変な作業です。

 

その働き方改革を、コンサルティング企業として名高いアクセンチュアが実行に移し、いまだ改革の途上にあります。しかし、改革スタートから2年半が経過し、社員の変化と手ごたえを感じることができた今、まさに旬なこのテーマで、江川社長が同社の取組内容を本書で公開してくれました。

 

わたしは長年人事の仕事に携わってきました。社員規模が1000人にも満たない中小企業でしたが、それでも組織風土やカルチャーを変えるのは大変むずかしく、成功した試しがありません。

 

世の中には組織改革に関するビジネス書はあまたあります。本書を手に取ったときも、よくある改革の必要性や理論の解説に終始したものなのではないかと思いながら、期待半分に読み始めました。

 

ところが、わたしも含めて人事担当者や組織改革担当者が心の底で知りたいと願ってきたであろうことが、惜しげもなくこの本には書いてありました。それは言うまでもなく、改革に成功した企業は、実際のところ何をやったのか、ということです。

 

理論は本を読めばおおかた理解することは可能でしょう。しかし、本当にむずかしいのは、それを実行計画書に落とし込むことなのです。そこのところが書いてあるという点において、この本ほど懇切丁寧に実情を明かしてくれるものは他にないのではないでしょうか。

 

この本が一冊あれば、コンサルタントに頼まずとも、自社で働き方改革を計画し進めていけると思うほどの親切な書きっぷりです。

スポンサーリンク



アクセンチュア流 生産性を高める「働き方改革」のまとめ・要約

アクセンチュアの働き方改革は、『プロジェクト・プライド』と名付けられました。このプロジェクトには、同社が実際に顧客に提供している「改革のフレームワーク」が用いられています。これを核にして、なりたい姿やロードマップ、組織体制づくりについて具体的に解説されています。

 

アクセンチュア流「改革のフレームワーク」が凄い

このフレームワークには4つの象限があります。第一象限から第四象限まで、それぞれのフェーズでアクセンチュアがどのような取り組みを行ったのか、その結果はどうだったのかが説明されています。また、そのときに実際に同社が作成して社内で共有した資料の一部も掲載されています。

 

『プロジェクト・プライド』の進捗状況を定点観測するために、アクセンチュアでは「プライド・サーベイ」という社内調査が実施されているのですが、その質問項目も掲載されています。しかも、本質的な課題を浮き彫りにするための質問文をつくるヒントまで書いてあります。

 

たとえば、改革前の調査で寄せられた社員の声のなかに、パワハラやセクハラに関するものがあり、解決すべき課題として挙げられていました。このハラスメントの根絶を問うのに、

 

「ハラスメントがありますか?」(書籍より引用)

 

という質問文では、イエスかノーの答えしか返ってこないので良い質問とは言えません。では、どういう質問文にすればいいか。

 

それは、

「ハラスメントを容認しない雰囲気があるか」(書籍より引用)

となります。なぜなら、ハラスメントと受け取られる発言があったときに、それを許さない雰囲気をつくることが根絶に通じるからです。

 

また、アクセンチュアは改革の最初の頃に、コミュニケーション強化月間として30日間、毎朝事務局から全社員向けにメールでメッセージを送信しました。そのメールメッセージの一部も抜粋して掲載されています。これを見ると、自分から気持ちの良い挨拶をすることを呼びかけるメールがあり、あのアクセンチュアがここまで泥臭い地道な作業をしていたのだと知ることができます。

 

本書の最後には解説編として、さらに改革にあたっての留意点やポイントが補足されています。コンサルティング企業として顧客に組織改革の方法論を提供しているアクセンチュアだからこそ、実践してみてわかったことが語れるのです。

 

働き方改革の予定がなくても、読む価値ありです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました