『【新装版】明治維新という名の洗脳』(苫米地英人著)という本のタイトルにあるように、今回書評と要約を書くのは明治維新に関する本です。
歴史好きな方以外は、「明治維新」や「坂本龍馬」と聞いても特に興味を引かれないかもしれません。あるいは、大河ドラマで司馬遼太郎原作の『竜馬がゆく』を見て、一通りの知識はあると思われるかもしれません。ですが、ちょっとお待ちください。
学校では習わなかった明治維新の本当の姿が、『【新装版】明治維新という名の洗脳』(苫米地英人著)には書いてあります。ぜひ、お手にとって読んでみてください。明治維新や坂本龍馬へのイメージが180度ひっくり返ること請け合いです。
【書評】明治維新という名の洗脳(新装版)
まずは『【新装版】明治維新という名の洗脳』の書評についてですが、明治維新の歴史的事実を解き明かしていくと、随分イメージと異なった姿が見えてきます。
たとえば、明治は日本の夜明けだという典型的なイメージがあります。このイメージは司馬遼太郎が『竜馬がゆく』で描いた坂本龍馬のイメージによるところが大きいと著者は指摘します。本来は、坂本龍馬は幕末で現代人のイメージほど活躍はしなかったそうです。それがNHKの大河ドラマ『竜馬がゆく』によって坂本龍馬の存在が認知され、爆発的な人気とともにキャラクターイメージが定着していったのです。
また、明治維新を象徴される言葉として「江戸城無血開城」などといわれますが、第二次長州征伐、鳥羽・伏見の戦いや上野戦争、戊辰戦争など、江戸時代と比較して明治維新の前後は内戦だらけでした。
歴史的事実を一つずつ積み上げていけば、テレビドラマにイメージ操作されることなく、本当の明治維新の姿が見えてきます。それは巷でもてはやされているような明るい未来を想起させるようなドラマチックなものではありませんでした。正しい認識をもつためには、いつもと違った角度からも明治維新というものを眺めてみてください。
【要約】明治維新という名の洗脳(新装版)
次に『【新装版】明治維新という名の洗脳』の内容を簡単に要約してご紹介します。
明治維新に勝利した萩藩(長州)。その財政状態は江戸時代から一定して借金まみれだったといいます。しかし、戦争には武器が必要です。そして武器を揃えるには大金が必要です。萩藩に資金力がなかったとしたら、いったいどこからどのようにして戦争のための資金を調達したのでしょうか。実はこの錬金のカラクリが現代の国家運営にもつながっていきます。
表向きは赤字財政だった萩藩が、多額の資金をもっていた。お金を借りるにしても、赤字で逼迫した藩ですから与信は低かったことでしょう。にもかかわらず、萩藩には資金があった。そのカラクリは、裏会計にありました。これを「撫育資金」といいます。藩の一般会計とは別会計として極秘の資金が貯蓄されていたのです。その額、なんと一般会計の4倍もあったとされています。
では、この裏金がなぜ現代の国家運営に通じるのか。それは現代の官僚制度にヒントがあります。現代の官僚制度の大元はといえば、長州閥がつくった明治新政府です。長州閥が政治の中枢を牛耳っていたのです。そして撫育資金の重要性を骨身にしみて感じていた長州出身の志士たちは、一般会計とは連動しない、自分たちが好き勝手に使える資金を確保しました。それが現在の特別会計です。
萩藩の裏会計のカラクリの他にも、読みどころはたくさんあります。たとえば、幕府のバックにはフランスがつき、薩長のバックにはイギリスがついていたということ。これは本当でしょうか?幕末時代に外国と和親条約や通商条約を締結したのは幕府です。そしてそれに反対したのは天皇及び攘夷論者たちでした。であるならば、イギリスがつくべきは幕府です。
また、幕末から明治の日本において重要なのが外資系銀行の存在です。萩藩が外国船を無差別砲撃した1863年に相次いで3つの外資系銀行が日本へやってきたというのです。その思惑とはいったい何だったのでしょうか。そして明治維新との関わりとは──。
その真相をぜひ本書『【新装版】明治維新という名の洗脳』で暴いてみてください。
苫米地英人氏の経歴
苫米地英人氏の経歴ですが、認知科学者、カーネギーメロン大学博士(Ph.D)、カーネギーメロン大学CyLab兼任フェローであり、株式会社ドクター苫米地ワークス代表などを務めます。米国認知科学の研究成果をベースとした能力開発プログラム「PX2」や「TPIE」を日本向けにアレンジして、その普及における総責任者としても活動されています。著書は『現代洗脳のカラクリ』など多数あります。
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