【書評・感想】弟子・藤井聡太の学び方

自己啓発

今や時の人となった藤井聡太氏。熾烈な戦いと称されるプロ入りの最終関門「三段リーグ」を制してプロ棋士となったのは、史上最年少となる14歳2カ月のときでした。

 

2018年2月5日に行われた『第68期王将戦一次予選1回戦』では、大接戦の末、持ち前の粘り強さで南芳一九段を逆転勝利で破ったそうです。それは230手にも及ぶ大健闘だったといいます。快進撃が止まりませんね。

 

そして3月8日に行われる一次予選2回戦では、いよいよ師匠である杉本昌隆七段と対決することになりました。2017年3月のNHK杯予選においても師弟対決のチャンスはありましたが、残念ながら杉本昌隆氏のほうが初戦で負けてしまい実現しなかったようです。

 

ということで、来たる『杉本昌隆七段VS藤井聡太六段』の師弟対決は公式戦では初手合となるため注目を集めています。そのプレミアムな対局を前に、師匠の杉本昌隆氏が弟子の藤井聡太氏について書いた『弟子・藤井聡太の学び方』(杉本昌隆著)の書評感想をご紹介します。

 

将棋をとおして見えてくる学ぶ姿勢には普遍性があり、私たちビジネスパーソンにとっても大きな気づきを与えてくれるはずです。ぜひ最後までお読みください。

 

弟子・藤井聡太の学び方 書評・感想

それではまず『弟子・藤井聡太の学び方』の書評からです。

 

本書には、「相手にこちらの飛車と金の両取りを狙う角を打たせ」という描写が出てきたり、「居飛車」(飛車を初期配置周辺に置いて進める戦法)や「振り飛車」(飛車を王将よりも左側に動かして進める戦法)など専門用語が出てきたりします。将棋を知らない私にはチンプンカンプンですが、紙面の大半は藤井聡太氏の将棋に対する姿勢から学べることや、将棋界の厳しさ、そして子どもが苦境に立たされたときの声のかけ方など、ためになることが盛りだくさんです。

 

何より将棋を職業として指す人は「引退するまで生涯受験生」だといいます。対局において「ちょっとくらい負けてもいいか」と気を緩めた瞬間、それは現役の終わりとなるかもしれないのです。そういう意味で、毎日毎日人生を左右するような重大な試験の勉強を必死でしているようで、気の休まることがないといいます。

 

そうした常に何かと戦っていなければならない厳しい世界に身を置いている人たちの姿は、自分が辛く苦しいときに励みにならないはずがありません。心が折れそうになり、甘えた気持ちが頭をもたげたとき、きっと背中を押してくれるサポーターの存在となるでしょう。

 

生きていれば、どこかで必ず壁に突き当たるときが来ます。むしろ苦境をなんとかして乗り越えるからこそ、一歩踏み出したときの喜びがひとしおなんですよね。今、辛い状況にいる人も、まだそういう経験はない人も、あるいは子どもや身近にいる大切な人が苦しんでいるときに手を差し伸べてあげたいと思っている人も、本書から得られることは多分にあります。ぜひ手にとって読んでください。

 

次に『弟子・藤井聡太の学び方』の感想ですが、将棋界がこれほど容赦ない世界だとは知らず驚きました。私たちは対戦結果しか見ないため、日々棋士のみなさんがどのように努力しているのかを知る機会がほとんどありません。自分とは接点のない世界を知ることは、刺激を受けるとともに、私たち自身の学びの抽象度を上げることにもつながります。将棋に興味がないからといって読まずにおくのはもったいないです。

 

それにしても、藤井聡太氏の極めてストイックな学びの姿勢には感動さえ覚えました。これからは自分が行き詰まったとき、本当に自分は行き詰まるほどとことんやったのか、それを問いかけようと思いました。

 

弟子・藤井聡太の学び方 要約

弟子・藤井聡太の学び方』の内容を簡単に要約してご紹介しましょう。

 

杉本昌隆氏が藤井聡太氏と初めて出会ったのは、2009年3月。藤井聡太氏が小学1年生から2年生に上がる直前のことでした。日本将棋連盟には、子どもたちが本格的に将棋を学ぶ場所として「研修会」というのがあり、二人の出会いもそこでした。その研修会で見た小学生の将棋が、プロ棋士を身震いさせるようなものであったといいます。藤井聡太氏のおそろしいほどの才能を見せつけられた瞬間でした。

 

そこから縁があって杉本昌隆氏が師匠となり、プロへの道を歩み始めます。しかし将棋は他人から習うものではありません。彼はいかにして強くなっていったのか。年齢や上下関係ではなく、志を同じくする者たちの学びの場をよりよくするにはどうすればいいのか。戦術書で手っ取り早く知識を得るのではなく、徹底的に一から自分の頭で考えることの大切さ。子どもの才能を見つけ、引き出し、開花させてあげるには、周囲の大人たちは何に気をつけなければならないのか。いつもそばに寄り添っていながら、決して子どもの戦いの場には足を踏み入れなかった母の真意とは。

 

本書のテーマは将棋ですが、組織におけるリーダーのあり方や部下の指導方法、あるいは親と子どもの向き合い方などにも十分応用のきく内容です。

 

棋士・杉本昌隆氏 経歴

棋士・杉本昌隆氏経歴を簡単にご紹介します。地元は藤井聡太氏と同じく愛知県。東海地区は将棋が盛んな地域だそうです。1980年に6級で故・板谷進九段のもとに弟子入り。2008年には「NHK将棋講座」の講師を務めています。地元の東海研修会では幹事を務める傍ら、杉本昌隆将棋研究室を主宰して後進の育成にも力を注いでいます。藤井聡太氏の師匠として有名です。

 

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