Googleでマインドフルネスが人気を得たわけとは
本書は、Googleでエンジニアとして働いていたチャディー・メン・タン氏によって発案されたものを書籍にしたものです。米国でベストセラーとなり、26ヶ国語で翻訳出版されました。国内でも話題を呼んだ書です。
著者のチャディー・メン・タンはGoogleにおいてエンジニアとして成功したあと、マインドフルネスをベースにした情動的知能を高める画期的な研修プログラム、Search Inside Yourself(SIY)を開発。Google社内で大人気となり他の企業・組織にも導入され、ニューヨーク・タイムズ紙でも特集された。2015年にGoogleを退社後、Search Inside Yourself Leadership Institute(SIYLI)を創立。会長としてSIYの普及に取り組んでいる。
マインドフルネスはいわゆる「瞑想」ですが、日本のビジネスシーンで摂り入れられることは少ないのではないでしょうか。もちろんGoogleでも、批判の動きはあったはずですが、なぜ人気となったのか?
メン氏は、自身の考案した活動が科学的分析に基づいていることを何度も語っています。科学的裏付けが、丁寧にわかりやすい言葉で説明されているのが本書なのです。
マインドフルネスとEQを関連付ける
本書では、マインドフルネスと密接に関わることとして、EQが紹介されています。EQとは、なんなのだでしょうか。
メン氏は、ダニエル・ゴールマンの著作「EQ ーこころの知能指数」を紹介し、EQの定義を引用しています。
自分自身と他人の気持ちや情動をモニターし、見分け、その情報を使って自分の思考や行動を導く能力
そして、ゴールマン氏が行ったEQを構成する5つの分類も紹介しています。
1 自己認識
2 自己統制
3 モチベーション
4 共感
5 社会的技能
本書ではこれらの領域ひとつひとつをベースに章が構成されています。これらの領域を向上させるために、マインドフルネスが最も効率が良いという論が、「サーチインサイドユアセルフ」なのでした。つまりメン氏が思うマインドフルネスの効果とは、「こころの知能指数」を上げることのできるプログラムだと語られています。
「サーチ・インサイド・ユアセルフ」感想、書評
本書が最も面白いポイントは、「座らないでやるマインドフルネス・エクササイズ」が紹介されているところでしょう。瞑想を座らないで行うということを初めて聞いた時、私は全くイメージできませんでした。
歩く瞑想は、看板通り単純だ。歩いているときに、一瞬一瞬の注意を体の動きと感覚のひとつひとつに向け、注意がそれるたびに、ただそっともとに戻してやればいい。
もちろん細かい方法や感覚についての説明はあります。本書では座って行うマインドフルネスを「重い集中力を必要とするトレーニング」、立ったまま行うものを「軽くて開放的なトレーニング」としており、「常に意識している」状態を作ることで、EQの5つの要素を改善しやすくすることです。
つまりメン氏がオススメする「立ったまま行うマインドフルネス」は、座って行う瞑想よりも負荷が軽く、なおかつ生活の中で実践するため効果を実感しやすいものなのでしょう。
「サーチ・インサイド・ユアセルフ」要約まとめ!
メン氏は本書でたくさんの参考図書を紹介しています。「紹介している知識のほとんどが先に研究していた人がいて、それを取りまとめたものだ」と発言をしています。
実際、本書では科学的分析データをグラフなどで示すものは少なく、どちらかというと「どんなエクササイズで実践すべきか」に注目して書かれています。
「科学的な瞑想」を売りにしたメンタルプログラムを、なぜ科学的に説明しないのか?そこにメン氏の狙いがあるように感じます。
メン氏が初期に考案したSIYプログラムも、短期集中セミナーではなく4週間実践と学習を繰り返しながら行われたようです。
Googleで人気が出たのはこのあたりも起因していることでしょう。圧倒的に実践主義をとることで、曖昧になりやすいマインドフルネスの効果を伝えることに成功したのです。
そういう意味で、この本は実践的マインドフルネスの本でもあると言えます。
本を通じて読者の生活が変わる、これほど有用な書はなかなかないものです。
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